男性更年期障害
女性の更年期障害はよく知られておりますが、実は男性にも更年期障害は存在します。女性の場合、閉経に伴う女性ホルモンの減少で、イライラ、ほてり(ホットフラッシュ)、疲労感、多汗などの症状が出現します。男性の場合は、「疲れやすい、意欲が出ない、イライラする、寝れない、性欲がない、勃起しづらい、手足の関節が痛む」などの症状が、男性ホルモンが年齢とともに減少することで出現してきます。近年では、そういった男性ホルモンの低下による症状を、LOH(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下)症候群と名付け、積極的に診療対象としていこうと注目を集めております。
年齢とともに男性ホルモンが低下するのはごく自然なプロセスです。しかし、それに職場や生活環境の大きなストレスが加わることで、男性ホルモンのさらなる低下や全身の生理機能や精神活動に影響を及ぼすと考えられます。なりやすいタイプとしては、真面目で几帳面な方、またストレスをためやすい方といえます。
保険診療で検査治療をしている医療機関もございます。しかし、保険診療では検査内容に不足があったり、治療方法(注射療法)も効果が一過性で不安定のため、当院では自費診療で検査治療とさせていただいております。
診断方法
まずは、下記のような症状について問診を行います。
- 体調がすぐれず,疲れやすい
- 不眠になやんでいる
- 不安感やさびしさを感じる
- くよくよしやすく,気分が沈みがち
- ほてり、のぼせ、多汗がある
- 動機、息切れ、息苦しいことがある
- めまい、吐き気がある
- 頭痛、頭重感、肩凝り、腰痛、手足の関節の痛み
- 手足がこわばる、しびれる、ピリピリする
- 尿が出にくい、出終わるまでに時間がかかる
- 夜中に頻回(2回以上)トイレに起きる
- 尿意を我慢できなくなり漏らしたりする
- 性欲や勃起力が減退したと感じる
そして、採血でテストステロン値を計測します。テストステロンは起床時から午前11時頃までがピークとなるので、午前中に採血するのが望ましいです。テストステロンには総テストステロンと遊離テストステロンがあり、両者の数値を見て診断していくわけですが、保険診療だとどちらかしか計測できません。しかし、当院は自費診療なので、同時に計測します。
- 総テストステロン値(午前中)<250ng/dl(2.5ng/ml)→LOH症候群
- 総テストステロン値(午前中)≧250ng/dl(2.5ng/ml)
→遊離テストステロン値(午前中)<7.5pg/ml→LOH症候群
治療方法
上記の検査でテストステロン値が低く、LOH症候群と診断でき、テストステロン補充療法を施行しても問題ない状態であれば、テストステロンを補充していきます。上述したように、保険診療で治療を行う施設もございますが、その場合は約3週間ごとに筋肉注射を行います。しかし、その治療方法ではテストステロンの血中濃度が安定しにくいという欠点があります。また、そのたびに注射をしなくてはならないので、その際の痛みがストレスになることもあります。
そこで、当院では外用薬を使用していきます。テストステロンが含有されたクリームを1日に1~2回、陰嚢(玉袋)に塗布していきます。
テストステロン補充療法にはいくつか副作用があり、以下のようなものが考えられます。
- 脂質代謝異常(善玉のHDLコレステロールの低下)
- 多血症
- 肝機能障害(主にテストステロンの内服薬)
- 睡眠時無呼吸症候群
- ざ瘡(にきび)の増加
- 体毛増加
- 潮紅(ほてり)
- 体液貯留(むくみ)
- 女性化乳房(胸が膨らんでくる)
- 精巣萎縮、男性不妊症
- 気分、行動の変化
上記のような副作用が起きていないかをチェックするため、治療開始2~3か月ごとに受診して頂き、問診と採血を行います。